脱走犬物語
やがて、地下鉄大谷地駅へとボクはたどり着きました。ボクの周りを取り囲む人たちは、みんな使っているこの街唯一の駅です。ボクがその昔、旅をしたのもここまでです。だから、ここからならゆっくり歩いても1時間以内で家に帰ることができます。駅の前でしばらく流れるバスやタクシーに見とれていました。けんちゃんも、きっとこのバスに乗り、この駅から学校に通い、この駅から東京へのスタートを切ったのでしょう。
その時でした。
「あら。脚が悪いのね、かわいそうに。」
華やかな衣装を着たおばあちゃんが、近づき、ボクをなでました。とても優しい手つきです。おばあちゃんは、手に持っていたビニール袋から、ソーセージを取り出しボクにくれました。とてもいい匂いがして食べたかったのだけど、ボクは噛み切れません。
「食欲もないのね。おばあちゃんとこいらっしゃい」
おばあちゃんは、近くにとめてあったピカピカの黄色いドアを開けると、そのままボクを抱きかかえて、車の中へと閉じ込めました。ブウーンという発信音がし、車はゆっくりと走り始めました。ボクは一体どこへ行くのでしょう。夕方には戻らなきゃいけないのに。
その時でした。
「あら。脚が悪いのね、かわいそうに。」
華やかな衣装を着たおばあちゃんが、近づき、ボクをなでました。とても優しい手つきです。おばあちゃんは、手に持っていたビニール袋から、ソーセージを取り出しボクにくれました。とてもいい匂いがして食べたかったのだけど、ボクは噛み切れません。
「食欲もないのね。おばあちゃんとこいらっしゃい」
おばあちゃんは、近くにとめてあったピカピカの黄色いドアを開けると、そのままボクを抱きかかえて、車の中へと閉じ込めました。ブウーンという発信音がし、車はゆっくりと走り始めました。ボクは一体どこへ行くのでしょう。夕方には戻らなきゃいけないのに。