脱走犬物語
「名前はなんていうの?ワンコウ。」

おばあちゃんは、その後しばらく「タロウ」とか「ポチ」とか色々勝手にボクのことを呼んでいましたが、やがて「茶色いからチャチャでいいわね。チャチャ!」と言って嬉しそうに顔をゆがめました。車は大谷地駅を通り過ぎ、住宅街を抜けていきました。見慣れない、緑おいしげる公園とか、大きな川を渡り、どこまでもどこまでも町の中心部へと向かっているようです。だんだん、目の前の景色が高い建物でいっぱいになってきました。

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