脱走犬物語

やがて、おばあちゃんの家へとたどりつきました。おばあちゃんの家はとても古くて、壁は青っぽくボロボロです。中に入ると、たくさんの古新聞やビニール袋、リンゴの芯とかいろんなゴミが散乱していました。

｢いま、食べ物を用意するから待っててね。チャチャ！｣

おばあちゃんはあっという間に、台所のほうへ近寄っていきました。ボクはおなかはあまりすいていなかったのだけど、ナンだか急におしっこがしたくなってしまいました。犬は普通匂いをつけたり、縄張りを示す時におしっこをするのですが、時々、緊張すると、キュルキュルとおなかの下の辺りが痛くなってしまいます。

ボクは必死でおばあちゃんの足元をこづいて知らせようとしました。家の扉や窓はどこも固く閉ざされています。

「うるさい！チャチャ！あっちへいけ！」
ナンだかとても恐くなりました。恐くなったボクはその場で、ジャージャーお漏らししてしまいました。

｢この、犬畜生が！！！｣

おばあちゃんは、突然モーレツに起こり、ボクの首根っこをつかむと、外へと連れ出し、グシャグシャの物置のようなところへ押しやりました。扉はピシャリとしまり、ドンドン叩いても、鍵がかかっているようで出ることができません。
ボクは閉じ込められてしまったようです。