脱走犬物語
住宅街を抜けながら南のほうを眺めました。その昔ここには、ジャンプして飛び越えられるほど小さな川があり、その裏側にはうっそうと生い茂る森がありました。ホームレスみたいな変なおじさんが、その森に住んでいて、子供たちが冷やかしによく遊びに来ていました。けど、今はその森はありません。川は今でもそよそよ流れているのですが、その裏側には、トラックが轟音を響かせて走っています。新しく、道路ができたようで、ボクはもうその森を駆け回ることができません。ホームレスの人もどこかへ引っ越したのでしょうか。