脱走犬物語
やがて近くの、「はらっぱ公園」へとたどりつきました。とっても広くていい公園なのだけど、最近全然ヒトの姿を見かけません。けんちゃんと、散歩に来ていた10年前は、子供達の姿がチラホラありました。けど、最近は子供が減ってしまったんでしょうか?小山のさきっちょに立って眺めてみても、ヒトの気配がまったくしません。ボクは、そのまま斜め向かいの家のほうに目をやりました。ここには、昔ゴンという大型犬が住んでいました。でっかい犬のせいか、いつも大きなウンコをブリブリしていて通るたんびに、くさい匂いがしてきました。当時、散歩して近所の仲間とすれ違い挨拶するたびに、はらっぱ公園の近くは臭いよねーと、みんな口々に言っていました。ゴンはみんなから煙たがれいたのです。
最初は、臭くていやだなあと思っていましたが、ゴンに挨拶すると意外とイイやつで、「冬はこの近くにでっかい雪だるまができるぞ」とか「もし、飼い主に捨てられて腹が減ったらウチへこい」とか色々教えてくれて、イイやつでした。ボクは散歩に出るたびにゴンと挨拶をして世間話をしていたのだけど、今から10年くらい前にゴンは突如姿を消しました。ウンコの匂いもしなくなり、そこには、何もつないでいない鎖がただむなしく転がっていました。小山を降り、ゴンの昔の住処へ行きました。車があって、飼い主は住んでいるようなのだけど、ゴンの気配はやっぱりまったくありません。久しぶりにここへ来たので、なんだか懐かしくなり、ボクはゴンとウンコの匂いをしばらく思い出しました。
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