脱走犬物語
公園を抜けると、ゆるやかな勾配のバス通りが続いています。このバス通りはとても便利で、通り沿いに歩いていくだけで、町の中心部へと抜け出ます。もう何時間か後だと下校中の小中学生に遭遇していろいろ遊ばれてしまうのですが、お昼を少しまわったこの時間はとても静かです。バス通り沿いには、昔マリーという真っ黒で巨大な犬が住んでいました。マリーは暴れん坊で、ちっちゃくてすばしっこいボクが憎たらしかったのか、よく追っかけては噛みつかれました。足のつめを切られてしまったこともあります。とてもおっかなかったのですが、凶暴なマリーも数年前から見かけなくなりました。マリーが住んでたオリは取り壊され、マリーが住んでたものすごく大きな家も、全部なくなり、今はそこにかわいらしい小さな家がポツリポツリと並んでいます。シンコージュータクチと言うのでしょうか?田んぼと畑ばかりだったこの街も見違えるほど変わりました。昔、散歩のたびにこのバス通りで出くわしていた、アレックスや、チャーリー、ウィリー、スミレなんかも今はすっかり見かけなくなってしまいました。みんな、どこでどうしているのでしょう。