今日から執事
「え?」
いかにも自然の流れです、といったふうに差し出された手帳。
ご丁寧に読むページが開いてある。
どうやら自分で読めということらしい。
「やっぱ自分で読んだ方がはよ覚えるしな。自立や自立!!」
上機嫌で真斗の背中をバシバシと叩いている神嵜。
その反動で少しだけよろける真斗。
自立とか関係なく、ただ面倒なだけじゃ…?
真斗から言わせればそれ以外に考えてられなかったが、自分で読んだ方が覚える、という意見には大いに賛成のため神嵜から手帳を受け取り読む。
手帳を読むかぎりページの上半分には、この家に住む際の注意点と敷地内の見取り図が書いてあった。
もっとも仕事に関係ない話なので無視して読み進めると、お目当ての“従者”について表記されている項目が目に入った。
ざっと目を通し、頭の中で要約し整理する。
結果、従者の仕事は主に三つだった。
一つ目は、主人の身の回りの世話をし常にスケジュールを把握しておくこと。
二つ目は、出来うる限り主人の傍を離れず、護衛をすること。
最後は、臨機応変に対応し、何より主人に忠誠心を持つこと。
「とまあ、これが従者の仕事やな」
ここまできて、やっと真斗は己が従者だという事に実感を持った。
見たこともない大きな屋敷を目の当たりにしても、燕尾服を着ても実感が無かったものが、急に現実を帯びてきて真斗に襲い掛かる。
正直、この手帳に書いてあるように主人を守れるのか不安で仕方がなかった。