今日から執事

伝えたい言葉






まだ夏真っ只中なのに、涼しい風が頬を撫でる。

今年は残暑がきつくないから、こうして時折涼しい風がふく。

直ぐ秋なのだと思うと寂しさが押し寄せてくる。

真斗は夏休みだけのバイトだから、夏休みが明けたらただの他人になってしまう。

もっと長く一緒に居たい。
たが限りがあるから、早綺は目的を見失わずにいられる。



もう一度風が頬を撫でて、早綺は目を瞑った。








しばらく歩くと趣のある古風な墓地が目に入る。

アンが最後に教えてくれた住所は、ここのものだった。
宇津木絢音の居る場所。

今日、早綺は絢音に一言申しに来たのだ。



沢山並んでいて、どれが宇津木家のものか分からないため、早綺はこのお墓の人間に訊くことにした。

その人は快く案内してくれて、その背中を追う。


「ここです」


そう指で示された場所は他のお墓と同じように、整然とそこにあった。



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