今日から執事
衝撃の出会い
「あの、神嵜先輩?そろそろ家の方達が来る時間じゃ…」
早稀お嬢様の部屋を二人で掃除している時だった。
神嵜から手帳を貰ってから、もう少しで一時間が経とうとしている。
おずおずと神嵜に尋ねると、一瞬の間のあと絶叫が響いた。
「あかんて!!もう直ぐやんけ。
なんでもっと早よう言うてくれんのや?」
「そう言われても」
困る。
大いに困る。
それに真斗は何度も言おうと口を開いたが、その度に神嵜は自分の話をし始め、真斗に喋る隙を与えなかった。
「本当にヤバいで。あぁチーフに怒られるわ、どないしよう」
ここに居ないチーフに対して神嵜は頭を下げて謝っているから、また可笑しい。
そんなにチーフは恐いのだろうか?
真斗が些細な質問をぶつけると、神嵜は鬼の形相で怒鳴ってきた。
「ほんま、恐ろしいで。俺今までチーフより恐い人見たことない」
自分の体を抱え、震える仕草をしてみせる。
真斗にはチーフの柔和な笑顔が頭から離れないので、いまいち想像出来ない。
そうこうしているうちに、神嵜と真斗は玄関に到着した。
そこには既に何十人もの使用人が集まっていて、どうやら真斗らが最後のようだ。