今日から執事
哀愁の涙
足音が聞こえて、真斗はとっさに近くの壁に隠れた。
足音は次第に大きくなり真斗の前で止まった。
必死で息を潜める真斗。
それに気付いたのか気付いていないのか、立ち止まった昴は直ぐに立ち去った。
とりあえず安堵の息を漏らす。だが、安心しても良いものか、真斗には分からなかった。
早綺を捜している途中にテラスから話し声が聞こえてきた。
それが緊迫した雰囲気を帯びていたため、不自然に思った真斗はこっそりと覗いてみた。
そこには、昴に押さえつけられた形で身動きを封じられている早綺がいて、真斗は一瞬目を見張った。
しばらく驚倒し、その光景が良くないと判断したが早く、間に割って入ろうと脚を一歩踏み出した。
だが次の瞬間、 早綺が昴に手を上げたのを目撃し、真斗は動きを止めた。
幸い向こうからこちらは見えていないようで、真斗は見つかってはいないようだ。
真斗は、早綺が危険にさらされるようであれば止めに入る事を決意し、最後まで成り行きを見ようと姿を隠したのだった。