今日から執事
昴が去っていった廊下を眺め、真斗は溜め息をつく。
どのように早綺に接すればよいのか分からない。
きっと…いや、絶対に早綺は傷付いていて、心を破かれた気分だろう。
そんな彼女に俺は何が出来る?
ゆっくりとテラスにいる早綺を目指して歩きながら考える。
けれどやはり答えは出なくて。
「…早綺お嬢様」
真斗がおずおずと呼びかけると早綺は顔を上げた。
壁に背を預けて座り込んでいる早綺は今にも壊れてしまいそうな程に、暗い顔をしていた。
「…ま、こと。どうしたの?」
真斗を視界に入れ、驚いた早綺はそう言って立ち上がった。
昴を叩いた右手を左手で包み込んでいる彼女は、無理に明るく努めようと声のトーンを上げ、笑顔を浮かべてみせた。
けれど、笑顔は笑顔にはならずに歪な表情になるだけだった。
真斗はそんな痛々しい早綺を見ている事が出来なくて、力一杯早綺を引き寄せ、抱き締めた。