今日から執事


そんな一悶着があり、結果真斗は大人しくこの屋敷へと赴いたのだった。

溜め息をついて空を見上げる。
視界には綺麗に蒼く染まった空と、高く真っ直ぐに聳え立つ木。
それから楽しそうに囀る小鳥たちが映った。

普段の真斗なら、この景色を美しいと感じることが出来ただろうが、今の真斗ではそれは不可能だった。


再び溜め息をつく。
正直、全くやる気がない。
今日だって、本来なら高校の仲間とバスケの試合に出る筈だったのだ。それなのに、父親の勝手でバイトをさせられるなんてまったく不本意だ。

試合に行けないとバスケ部の部長に伝えた時の部長の顔といったら、まるで般若と表現するのに相応しい顔だった。


まぁ、俺はバスケ部じゃないからそこまで怒られなかったけど。


真斗は正式には空手部に所属しているので、バスケ部員のように怒られることは無かった。
同学年のバスケ部から頼まれて、その必死さに心打たれて了承したのだ。

第一、真斗は骨折したレギュラーの代行だったので他学年のレギュラーからは文句も言われていた。

何故バスケ部員でもないあいつが、と。

真斗自身その理由が分かっていなかったが。



とりあえず、今真斗が解っているのは、自分の父親のせいで今日から始まる楽しい夏休みをぶち壊されたことだ。


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