今日から執事
抱き締めた早綺の身体は冷えきっていて、今の彼女の心境を表しているようだった。
「何故、強がるのですか?」
静かに問い掛ける。
すると、早綺の身体が小刻みに震えだした。
真斗はそれをおさえようと、安心させようと更に抱き締める腕に力を込める。
「強がってなんか…いない…」
問いに返ってきたのは、あまりにもか細い、声。
「俺の胸ならいくらでも貸します。だから、もう無理しなくて、いいんです」
赤子に諭すように優しく言葉を紡ぐと早綺は沈黙した。
そして直ぐに耳元で早綺の嗚咽が聞こえ、真斗は指で早綺の涙を拭う。
泣けないほど、辛いことはない。
真斗の腕の中で、すがりつくようにして泣いている女は、普段いくら虚勢を張っていてもその本質は、とても脆いのではないか?
ーー泣くことが、今この時だけの気晴らしに過ぎなくても…。
真斗は、再び早綺が花のような笑みを見せられるようになれば、と内心で願った。