今日から執事
戸惑い、苛立ち
パーティーから約二週間が経過した。
早綺は自室に籠もって何をするわけでもなく、ただ呆けていた。
最近、一人の時間が多く、そのたびに昴との一件を思い出してしまう。
富と名声…世の中は金が全てだと苦しそうに言った昴の顔が早綺の頭を幾度となくちらついて、呼吸を乱す。
あの一件から、特に変わった事は無かった。
普段通りに家族とも話すし、使用人にちょっかいを出しては、お小言を貰う。
普段通りに食事をして、友達と話し、勉強をする。
どれもいつもと何ら大差ない。
早綺にとっては当たり前の日常だ。
ーー唯一、変わった事といえば、真斗と話さなくなったことくらいだ。
正確には早綺が真斗を避けているため、話す機会が極端に無い。
執事として一番身近にはいるが、今や早綺と真斗の間には越えられない深い深い溝が確立されつつあった。
最もそれを造ったのは、この早綺自身であるのだが。