今日から執事
「昴兄様は、私にとってとても大切な人だったの!
いつも優しくて、昴兄様の笑顔を見ていると、心が温かくなって。
慕うとか、そんな簡単なものじゃなくて…」
早綺の言葉は次第に弱々しくなっていく。
対抗心から紡いだ言葉は、最後にはただの無力な言葉へと変貌する。
一一そう。慕っていたんじゃなかった。
昴兄様が…一一
その先を考えることは出来なかった。
考えて、それを認めてしまったら自分が壊れてしまう気がするから。
己が紡いだ言葉が、鋭利な刃物となって心を抉る。
「だから、今は真斗の話しなんて、説教なんて聞きたくないのっ。
何も分かっていないくせに。私がどれだけ苦しんで不安になって…。
みんなを疑いたくないのに、真斗や、みんなを見ると自然と身体が強張っていて。
そんな自分が嫌で嫌で仕方がないの!!」
ずっと自分が嫌だった。
屋敷の使用人達が悪い訳ではない。
何も非はないのだ。