今日から執事
「もっと人に弱いところを見せていいんだ。もっと俺を、信じて」
それは真斗の悲願のようなもので、早綺の心に深く刺さる。
まただ。この顔。
早綺は思い出す。
自分を頼って欲しかったと言った時の真斗の苦しげな顔を。
そんな顔して欲しくない。
「早綺お嬢様は、思った事を伝えた方がいい。
辛かったら、辛いと。嬉しかったら、嬉しいと。
だから、そんな事で悩まないで下さい」
真斗の本心からの言葉。
今の早綺にとって、これ以上に嬉しい言葉などない。
「確かに、新崎昴の態度は苛つきました。
愛してくれる女性を何とも思っていないような態度や口振り。そしてお嬢様への裏切り。
散々な事を言われて、とても苦しい思いをしたことは俺も承知しています。
だけど、だからこそ早綺お嬢様はそのしがらみに捕らわれていてはいけないと思うのです」
「しがらみ?」
「はい。お嬢様はまるで新崎昴に依存しているように感じます。
…俺は、それが嫌だ」
最後は自分に語りかけるような物言いで、けれどとても儚い言葉に聞こえた。
昴兄様に依存。
そんなこと、考えた事がなかった。
それに嫌だとは何か。