今日から執事
◆第二章 孤独な執事
白と茶を基調とした簡素だけれども、決して優美さを失わないキッチンに二人はいた。
キッチンと呼ぶには大きく、厨房と呼ぶには小さい。そんな場所だ。
屋敷の人達が使ったティーカップを熱心に磨く真斗にからかうような声がかけられた。
「明日、早綺ちゃんと出掛けるんやて?」
含み笑いを隠そうともしない神嵜が、ティーカップを食器棚に戻しながら言う。
対して真斗はやれやれといった顔で首を小刻みに振った。
それを肯定の意と見なした神嵜は声を上げて笑う。
おまけに
「真斗も振り回されているんやな」
などと言う始末である。
「…仕方ないんですよ。約束なんで」
言葉を放ちながら、真斗の脳内は昨日の出来事を描いていた。
事の始まりは、昨日の夕刻である。