今日から執事
はじまりの約束
太陽が沈むにつれて、微かに温度が下がっていく。
とは言っても、まだまだ夏真っ只中なので額に汗がうっすらと浮かぶ程には暑いのだが。
けれどそれさえも冷房がきいたこの部屋では関係ないのだけれど。
今日は早綺が学校に用があるとかで、朝早くから出掛けていた。
流石に執事兼護衛がついて行く必要は無い場所と判断されたのか、真斗は短いながらも休みを与えられていた。
主が居ないとこんなにも暇なのかと、この静寂を噛み締めている真斗である。
最近は専ら早綺の傍にいて、あれをしろだとか、これを持ってこいだとか、散々こき使われたため疲労は思った以上に溜まっていた。
けれど、そのお陰で嫌なことを思い出さなくてすむのも事実で。
早綺といるときだけは、しがらみに囚われずに落ち着いた状態でいられた。
「女々しいな」
我ながらそうだと思う。惨めだとも思う。
真斗は自室のベッドに寝転んで、片腕で目を覆う。
意図的に頭を真っ白にすると、自然とまどろんできて眠りへと誘われていった。