今日から執事


ふわふわとした意識の中。ぼんやりと声が聞こえてくる。


まだ幼さの残る、あどけない笑い声と、狂気に満ちた叫び声…。

重なって聞こえるそれは、とても同じものとは思えないが、確かに同じ、幼い頃の真斗の声。


『ずっと一緒にいよう』


かつての真斗の楽しげな話し声が耳を突く。
耳朶を揺らし、心を深く、掻き乱す。


『どうして!俺のせいでっ…』


かつての真斗の悲痛な叫び声。
耳朶を揺らすだけでなく、全身を駆け巡るそれは、容赦なく真斗を蝕む。


どの言葉も実際に真斗が言ったものであり、記憶の端へと追いやられた過去の産物。


無意識という意識の中で、真斗は過去に愛した人に思いを馳せる。
けれど、人物の顔は霧がかかったように霞んでいて、思い出せない。


いや、思い出したくないのかもしれなかった。



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