今日から執事
段々とはっきりしてくる意識の中で真斗は足音を捉えた。
弾んで聞こえる足音は、次第に真斗の方へと近付いているように思えた。
何だ…?
未だに考えあぐねている思考を無理に覚まさせ、ベッドから身体を起こした。
酷く身体がだるい。
指先が異様に冷たかった。
真斗の頭の中には先程見た音声が木霊している。
何度も何度も、真斗の意識に反して繰り返されるそれに、息苦しさを感じ、小刻みな浅い呼吸になってしまう。
その浅い呼吸に重なるようにして、足音が強く聞こえた。
ふと、周りの音が無くなった気がして、辺りを見渡すと音もなく部屋のドアが開いた。
刹那、音を無くした世界は元の姿を取り戻し、それとほぼ同時に、嬉々とした早綺の明るい声が響いた。