Ray ~破滅~
「ねえ、悪いんだけど礼くんから凛雄に電話してもらえない?私がしても、あの子出ないから」
母さんは俺にそう頼んだ。
たしかに、母さんの言うことは正しかった。
凛雄は、両親にはかなり反抗しているものの、俺の言うことは結構よく聞く。
あいつも俺のことは、信用しているんだ。
だから両親は、凛雄とのことでも俺を頼る。
「うん、分かった」
俺は微笑んでそう言った。
それはとても自然な返しだった。
心とはどれだけ違う表情でも、俺は簡単にできる。
肉親にも怪しまれることはなく。
母さんも俺のその様子を見て、少しだけ笑った。
それがどれだけ、愚かなことかも知らずに。