短編オムニバス「平和への言葉」
第一話 『ボタン』
彼は、右手を延ばしたまま、もう何十分もその姿勢で固まっていた。
右手の人差し指は、小さな赤いボタンに触れようとしている。
彼は、そのボタンを押すか押すまいか、その葛藤を続け、動けなくなっていたのだ。
カチャ
ドアが開く音にビクッとし、手を引っ込める。
後ろを振り返ると、秘書がコーヒーを持って立っていた。
「…ありがとう」
彼はそう言うと、秘書からコーヒーを受け取り、一口飲んだ。
気分が落ち着いてきた。
さっきまでの高揚した気分のままでは、彼はいずれボタンを押していただろう。
簡単に決められることでもないのに、人は感情で生きているのだと、妙に実感した。
彼は立ち上がると、秘書に
「今日はもう帰る。明日は朝一番でここに来るからよろしく頼む」
そう告げて、上着を羽織り、部屋を出た。
右手の人差し指は、小さな赤いボタンに触れようとしている。
彼は、そのボタンを押すか押すまいか、その葛藤を続け、動けなくなっていたのだ。
カチャ
ドアが開く音にビクッとし、手を引っ込める。
後ろを振り返ると、秘書がコーヒーを持って立っていた。
「…ありがとう」
彼はそう言うと、秘書からコーヒーを受け取り、一口飲んだ。
気分が落ち着いてきた。
さっきまでの高揚した気分のままでは、彼はいずれボタンを押していただろう。
簡単に決められることでもないのに、人は感情で生きているのだと、妙に実感した。
彼は立ち上がると、秘書に
「今日はもう帰る。明日は朝一番でここに来るからよろしく頼む」
そう告げて、上着を羽織り、部屋を出た。