短編オムニバス「平和への言葉」
「そうなんだぁ。大事なお仕事なんだね。あたしのパパも、毎日大事なお仕事してるよ」

父親の仕事を尊敬しているのか、女の子は誇らしげにそう言った。

俺は返答に困ってしまった。

だが、俺が何か言い返すより早く、

「あ、信号青になったよ! おにいさん、渡ろう!」

女の子はそう言うと、俺の手を引っ張った。

繋いだ手から、女の子の優しさが伝わってくるようだった。

信号を渡り終えると、建物まではもう、すぐそこだ。

女の子は、なおも手を繋いだまま、建物に向かおうとする。

俺は、足を止めた。

「行くの、やめないか?」

女の子に聞いてみる。
それはヘンな提案だっただろう。
女の子は首を傾げる。

「何で?」

俺は答えられなかった。



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