短編オムニバス「平和への言葉」
彼が赤ん坊をのぞき込むと、赤ん坊は彼の目をじっと見返し、やがてにっこりと笑った。

嬉しそうに笑いながら、彼の顔に小さな手を伸ばす。

彼がその手を握りしめると、楽しそうな笑い声をあげて、喜んだ。

その笑い声は、心の底から楽しそうで、思わず気むずかしげな彼の顔にも、笑みが浮かぶ。

「寂しかったか? 遅くなってすまなかったな」

彼が優しく声をかけると、赤ん坊はさらに嬉しそうに笑い声をあげた。

彼は、しばらく時間の経つのも忘れて、赤ん坊と戯れていた。

「お食事になさいますか?」

使用人の声に、ようやく彼は時計を見上げる。
1時間近く、赤ん坊と遊んでいたようだ。

「そうだな。すぐ用意してくれ」

彼はそう言うと、支度が出来るまでもうしばらく赤ん坊と遊ぶことにした。

だが、一度意識が現実に立ち返ると、彼は先ほどまでの葛藤を想い出す。

――やはり、ボタンを押すべきか……

彼が、そう考えた時。


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