短編オムニバス「平和への言葉」
翌朝、いつもの通り使用人が着替えを持ってやってきた。

「おはようございます。お着替えをお持ちしました」

あたしは黙って彼女から着替えを受け取る。

彼女はちょっと立ち止まって何かを待つ仕草をする。

そっと、カゴの方を向いて、びっくりした目をした。

何かを問いたげな目であたしを見たけど、余計な口をきいちゃいけないのが決まりだから、そのまま口をつぐむ。

そして、悲しそうな顔をしたまま、一礼して部屋から出ていった。

何かが、物足りなかった。


使用人がご飯を持ってきた時。

やっぱりカゴの方を見て、悲しそうな顔をして去っていく。

家庭教師が帰る時。

やっぱりカゴを見つめて、悲しそうにため息をつくと、そのまま帰っていく。

彼らの顔が、目に焼き付いてはなれない。




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