短編オムニバス「平和への言葉」
「おはようございます。お着替えをお持ちしました」

翌日、いつもの使用人が着替えを持ってやってきた。

あたしが黙って着替えを受け取ると、使用人は一礼してドアから出ていこうとする。

その背中に、あたしは思い切って言ってみた。

「……ありがとう……」

それは、とってもとっても小さな声だったのだけど、使用人には聞こえたようだった。

驚いたような顔をして振り返った後、彼女は今まで見たことのないくらい、満面の笑顔であたしの事を見た。

そして、まわりをきょろきょろと見回すと、小さな小さな声で、

「どういたしまして、お嬢様」

そう言うと、そそくさと部屋を出ていった。



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