短編オムニバス「平和への言葉」
久しぶりにパパが帰ってきた時に、あたしはその話をパパにした。

「ありがとうってね、言うとね、とっても心がほかほかするんだ」

あたしが興奮しながらそう言うと、パパは嬉しそうな顔をした。

「インコが教えてくれたの。……いなくなっちゃったんだけど」

あたしが悲しそうに言うと、パパはちょっと寂しそうな顔をして、外を見た。

「そうか……インコはいなくなってしまったのか……」

そっとため息をついたみたい。

「役目を終えたのかもな。おまえが、『ありがとう』を覚えたから。

あれはね、おまえのママのインコだったんだよ」

それは、初めて聞く話。

あのインコが、あたしのママのだったなんて!

「ママはね、誰に対しても、いつだって、笑顔で『ありがとう』を言う人だったんだよ。あのインコは、ママのそばにいたから、その言葉を覚えたんだろうね」







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