蕾
ロビーに行くと、先に佐々木先輩が待っている姿が見えた。
私は急いで駆け寄り
「お待たせしました」
と謝りながらお辞儀をしつつ、チラッと時計を見た。
まだ、十分前じゃない!!
「まだ、時間じゃないから良いのよ。まぁ、そんな律儀なあなただから、気に入ったんだけどね」
そう言うと、笑みを溢しながら歩き始めた。
試されてる?
完全に、先輩のペースになってるし……
会社から出た先輩は、一台のタクシーを停めると乗り込んだ。
私も後を追い乗り込むと、先輩は程近い駅の名前を運転手さんに告げた。