結局、佐々木先輩から解放されたのは十時半を回っていた。

もちろん、全て先輩持ちでお金の心配を少しでもした自分を恥ずかしく思えた。

先輩とは駅で別れ、違う電車に乗り込んだ瞬間にドッと疲れが押し寄せてくる。

プライベート専用の携帯電話を開くと、メールが三件も入っていた。

きっと涼からのメールね。

一件ずつ開くと、ちゃんとお家で待って居るようだ。

可愛くて頬が緩む。

涼は柴犬だな……なんて、くだらない事を考えながらメールを返信した。

電車が停止し、ドアが開いた瞬間にドッと人が流れ込んで来る。

すぐに現実に戻される。

佐々木先輩の話……悪い話では無いと思う。

ただ、成功すればの話であり、その可能性だって大いに有る。

もちろん、その逆の可能性も……


リスクと冒険。


その先に見えるのは、成功か否か……


「賭けよね」

つい、口から出てしまった言葉に隣のサラリーマンがびっくりした顔をしていた。


< 107 / 138 >

この作品をシェア

pagetop