蕾
段々と人が増えていくオフィス内。
適当に仕事を片付け、切りが良い所で席を立った。
エレベーターホールに向う途中、喫煙所に居た涼に出くわす。
「梓先輩、どこに行くんですか?」
タバコを吸う涼は、いつ見ても格好いい。
うっとりするわ。
「社長室に呼ばれているのよ」
私はうっとりしている事を、なるべく涼に悟られない様に平然を装う。
「社長室に?」
不思議そうな顔を覗かせると、キョロキョロと辺りを見回し
「早く帰って来てくださいね」
と、耳元で囁いた。
やっぱり、柴犬みたい。
私は内心『マテ』をさせ、笑顔で涼の元を去った。