蕾
ウェイターさんは、絶妙なタイミングで料理を運び、それが全て美味しいの。
料理も美味しくて、お酒も進んで……
きっとほろ酔い気分だったからかもね。
今日の私はいつもより断然饒舌になっていて、気がついたら仕事の話をしていたんだ。
「ごめんね。こんな時にする話じゃないよね」
そんな自分に気がつき嫌気がさす。
「嬉しかったよ」
「えっ?」
「梓さんが俺に仕事の悩みを話してくれて、嬉しかった」
なんて返答して言いか分からなくて、ワインを一口飲んだ。
「それと、今の話。忘れてる事が一つ有るよ」
「忘れてる事?」
私はナイフとフォークを動かしながら、涼に質問した。
「うん、厳密に言うと忘れてる選択肢かな」
涼は何を言っているのだろうか?
他の人からは、何の話も持ちかけられていないし、それ以上びっくりする話なんて聞いてない。