「誰が仕事を辞めて欲しいってお願いした?俺は、奥さんになって欲しいってお願いしたんだよ。

結婚する事で、梓さんを縛り付けるつもりもないし、より伸び伸びと仕事をしてもらいたいって思っているんだ。

仕事で失敗したって、帰る所があれば失敗なんか怖くないだろ?」



そう言った涼は、今までに見たことが無いくらい大人で素敵に見えた。


「…涼」


私は溢れだしそうになる涙を必死に堪えながら、一つ頷いた。


それを見た瞬間、ものすごく嬉しそうな顔の涼が目の前に居たんだ。


「これ、受け取ってくれる?」


小さな小箱を、私の掌に乗せると回りから私の手を包み込んだ。


小箱を開くと、細くて小粒のダイヤモンドが一つ付いているリングが、キラキラと輝いていた。


涼はリングを私の左手の薬指に付けると、


「どんな時も、何が有っても、ずっと二人で生きていこう」


「はい」


そう言う事が精一杯で、それ以上の言葉が見つからなくて、ただただ涙を堪えながら溢れ出す悦びに身を任せていた。


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