蕾
「行こうか」
と、触れた手が余りにも冷たくて、つい手を離してしまう。
な……なにこの冷たさ?!
まさかと思い顔に触れると、冷蔵庫ばりの冷たさ。
「ちょっ…何でこんなになるまで待ってたの?!」
焦りながら両手で涼の顔を包みこみ、必死に温めた。
「えっ?今日、昼間に佐々木さんと会うから遅くなるってメールしてきたじゃん。
だから、きっと梓さん凹んでるかなって思ってさ」
……涼。
「だからって、ずっとここで待って無くたって……」
「ごめん。迷惑だった?」
なんて、哀しそうな瞳をするんだ。
「バカッ……心配なのよ」
そう言うと、涼の唇にキスをした。
冷たくて氷の様な唇に、私の涙が伝い溶かして行く。
「……」
涼は、何も言わず私の頬を伝う涙を拭うと
「行こうか」
とだけ言い、私の肩を引き寄せた。
言葉なんて要らないんだね。
肩に触れた手から、涼の温かさが伝わってきて、涙が止まらなかった。
まるで子供の様に、グシャグシャになりながら止まらない涙を拭っていた。