蕾
「梓さん、やり過ぎ」
屋上でいつも通りお昼を食べながら空を眺めていたら、後ろから肩を叩かれた。
「アレくらいしないと、いい子が育たないのよ」
涼は片手でネクタイを緩ませると、苦笑いしていた。
「最近、Sっぷりが酷くなってない?」
「なに、文句有るの?」
ってか、私からしたら涼のM度合いが更に磨きあがってる感じがするけどね。
「い…いや、そう言う訳じゃなくて……」
「じゃあ、何?」
ギロっと睨む私に
「そんな梓さんも好きだなぁ~って……」
「……」
「……」
「バッカじゃないの?」
私は飲み終わった缶コーヒーを涼に押し付け、そのままオフィスに戻って行こうとした。
「え――――?!」
こ……こいつ。
後少しで真っ赤な顔を見られるところだったわ。
危ない危ない。
私が帰ったと思いため息をつく涼の背後から近づき、耳元で囁いた。
「今夜、覚えておきなさい」
「うわっっ!!!」
突然の事に驚き、ベンチもろとも転げてしまう涼を、やはり可愛くていとおしく感じるのは、S的性になるのだろうか。
きっと私達、結婚してからもこんな関係が変わらなそうね。
バタつく涼を後目に、ニヤニヤしながら一人オフィスに戻っていく私。
こんな関係が終わる日が来るのか……
きっと、誰にも分からない。