蕾
いつもは何とも思わないラッシュも、今日ばかりは嫌になる。
朝からサラリーマンのおじさま方に、押しつぶされそうになりながら乗り込んだ電車。
キツイ香水、汗臭いシャツ、加齢臭……
治りかけた頭痛が、又再発しそうで吐き気をもよおした。
私、何やってるんだろう?
窓ガラスに映る私の顔は、少しやつれていた。
『…ヒドい顔』
そう呟く私の声は、電車の騒音にかき消されて気付く人など居なかった。
会社に着くと、みんなが挨拶してくる。
そりゃそうか。
私、上司だもん。
失恋ホヤホヤの上司……
ああ、バレたら恰好の餌食だな。
なるべくいつも通りに振る舞ってみたけど、どんな顔してたか分からないや。
とりあえず腫れぼったい目の事は、誰にも気づかれて無い様子でホッとしたわ。
でも、涼は見れなかったな。
何とか自分のデスクまでたどり着いた私は、通勤だけでドッと疲れていた。