仲直り

私は、涼のスーツの袖を引っ張った。


「ん?!梓…さん??」


振り向いた涼は、目を見開いて驚いていた。

もう、我慢できなかった。

私は泣きながら、


「…さっきの……彼女?」


と聞いてみた。

涼は、私の口からそんな言葉が出てくるなんて意外だったのだろう。

少し嬉しそうに聞いてくる。


「……気になります?」


そう言われると、素直になれない私。


「………」


私はまたしても「うん」と言えなかった。

涼はそんな私に、いきさつを話してくれたんだ。


「ずっと、ご飯行こうって誘われていたんです。俺、梓さん居るからって断ってたんですけど、別れちゃったしもうヤケクソで」


涼が……涼がフったんじゃない。


でも、そんな涼が私と同じ気持ちで居てくれた事が嬉しかった。


「…お店に……戻るの?」


私は俯いたまま聞いた。


「戻って欲しくないですか?」



意地悪な涼。



私の性格を分かっているくせに……


< 30 / 138 >

この作品をシェア

pagetop