私が言葉を発する前に

「梓先輩、すみませんでした」

そう言って、深々と頭を下げた。


涼が悪いんじゃないんだけど……


「桜木君、なかなかナイスな教育方針ね」

なんて、つい皮肉を言ってしまう私は、やはりSなんだなって思う。


「申し訳ありません」


涼は、頭を下げたままもう一度私に謝った。


私は頭を下げる涼を見ながら、涼の公私混同しない姿勢が好きだな~~



なんて悦に入っていた。



涼は必死なのにね。。。



「桜木君、仕事に戻りなさい」


涼は私の言葉を聞くと、顔を上げた。


キリッと凛々しい顔は仕事モードの顔をしていて、つい抱きしめたくなる。


もちろん、寸前で抑えながら私は涼を見ていた。


振り返る前に、一瞬甘える顔を見せたのを見逃さずにいた私は、涼の腕を掴んでいた。



涼は目をまん丸くして


「あ、梓さん…どうしました?」


って聞いてくるもんだから


「ごめん。」


そう言ってパッと手を離した。


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