蕾
「社内は走らない。」
静が着くや否や私は鞄を見ながら叱咤する。
ここは学校か?!
まったく、二十歳過ぎてるんだから……って小言が出てしまいそうになる。
まるで教師にでもなった気分だった。
「す……すみません!!」
静は小さな体をより小さくして、私の机の傍で私の様子を伺っていた。
本当にペットみたいな子だわ。
……いや、よっぽど犬の方が頭良いかもな…
私はそんな事を思うと、気付かない内に苦笑していた。
不思議顔の静に、
「行くわよ」
そう言って、私は歩き出した。