あまりにも予想外で、上手い言葉が見つからなかった。


何だか恥ずかしくて、私は涼から離れた。


私を見つめる涼は、すごく男の顔で見とれてしまうよ。


私は視線を外すと、


「涼に、私を引き止められるの?」


と、何ともS的な可愛げの無い言葉を吐いていた。


それでも、涼はいつもと違ったんだ。



私を、後ろから抱きしめると



「力ずくでも、引き止める」



そう言ったの。



力強い腕に抱かれながら、涙が出そうな位嬉しかった。


それでも、やっぱり可愛い言葉なんか出て来なかったんだ。



Sの悲しい性。



私は、涼の鼓動を感じながら腕を触るのが精一杯だった。


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