その日の夜、私達がご飯を食べていると



――――PiPiPiPi PiPiPi



涼の携帯が鳴った。



女か?



なんて勘ぐったのもつかの間。



どうやら取引先の方かららしく、仕方なく電話に出ていた。




「えっーーっと…今からですか?」




離れていても、聞こえてくる電話の向こうの声。



騒がしい中で、桜木君来れないのかな?なんて嫌味な会話。



可愛そうな涼…



行って欲しくはなかったけど、行けない事で涼が馬鹿にされるのだけは嫌だった。



チラッと私の方を伺う涼に、私は無言で頷いた。



涼は片手で、ごめん!の手振りをしながら



「分かりましたすぐに伺います」



そう言って電話を切った。



直後、携帯を床に投げつけていた。

珍しく感情的な涼。



本当に嫌味な取引先だよね。



私は、涼の頭を撫でてあげると



「これも仕事だから」



そう言って、涼の頬にキスをした。
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