MADE IN BLUE -ソラ・ニ・ナリタイ-
俺は終電には乗らずに、真ん丸な月を見ながら歩いて帰ることにした。
リナとタスクくんの家から自分の家まで三駅。
歩くには少しだけ距離があるが、アルコールで火照った身体に凍みる冷たい風が心地好い。きっと家に着く頃には呼気に含まれるアルコール臭さも抜けているだろう。
別に、そういう『未成年らしからぬ行動』(例えば飲酒や喫煙)にうるさい親ではないけれど。
「終電で帰る」と言うと、タスクくんはあからさまに残念そうな顔をして「いやだ」と言った。
一緒に飲む相手がいなくなるのが寂しいのだろう。リナは、煙草は吸うのに酒は飲まないから。
だけど、ルールは守るものだ。ゲームとはそういうものだから。ルールを守ることでゲームは更に楽しくなる。
ルールの一つに、夜を明かさないというものがある。
それはリナが言い出した。
「それは、私たちのような関係の二人をダラダラとさせない為に必要じゃない?」
あの日、初めての逢瀬の後に彼女は言った。
そして俺はいつも終電で帰る。
俺たちは『恋人』であって『セフレ』ではない。
恋愛感情の無い恋人同士に必要な最低限のルールをリナは知っていた。