MADE IN BLUE -ソラ・ニ・ナリタイ-
俺は学校の後、繁華街の交差点に焦れていた。
仕事の時間に間に合うか否かの瀬戸際なのだ。
信号が青に変わろうとする一瞬前、俺は走り出す為に腰を落としてふくらはぎに力を込めた。その時だ。
トン、と軽い刺激が肩に触れた。
振り返ると、ニコリと笑う女の子がいた。目元は大きなサングラスで覆われ、そのサングラスのせいで顔の半分近い部分が隠されている。グレープフルーツのような、その小さな顔の口元は微笑みに彩られていた。キャンディみたいな唇が旨そう。
そんなことを考えていたら、周りの人間が動き出した。信号が青に変わったのだ。
「…あ」
思わず声を洩らすと、彼女は小鳥の囀りみたいな笑い声をあげた。
「充くんでしょ?私も今からスタジオに行くの。近道を知ってるから一緒に行きましょ」
呆気にとられている俺の腕を軽やかにとると、彼女は歩き出した。