MADE IN BLUE -ソラ・ニ・ナリタイ-
大人は判ってくれない
あの週刊誌の一件で俺は佐伯さんにこっぴどく叱られた。無防備すぎるとか、未成年のくせにあんな深夜に出かけるなとか、色々。
だけど最後に一言、少し呆れ口調で佐伯さんはこう言った。
「まぁ、名前を売るには良いチャンスになったけど」
ちなみにこれも俺の想定内。
とにかく、うちの事務所からは良いお友達ってことでマスコミに言っておくから。本当、アルコール飲んでなくて良かったよ充が。
佐伯さんはそう言って立ち去った。
俺は事務所のソファに座って、残ったコーヒーを一気に飲み干した。
「よ。色男」
背後から急に現れたタスクくんに頭を乱暴に撫でられて、俺は思わず「わっ」と驚いた。
「デビューから2、3ヶ月で初スキャンダルとはやるねぇ」
タスクくんは俺の隣に座って煙草に火を点ける。
俺が吸えないの知ってて。
チクチョウ。
「しかも相手が水城ちゃんねぇ。羨ましいぜコノヤロウ」
優雅に吐き出された煙から目を逸らして、俺は白い壁の染みが幾つあるのか数えることに意識を集中させた。
「まぁ手出してないんしょ?お前、狡猾だもんな。不利になることはしないか。目の前に餌を差し出されても、食らいつかないよな」
「不用心に食らいついて、毒にやられるようなことはしないですよ」
「かーわいくないねぇ」
「差し出された餌より、自分で狩った餌の方が美味い」
「それって何のこと?」
わかってるくせにわざと聞いてくる。
「お前、いつか芝居やれよ」
長い指が、灰皿に煙草を押しつける。
「その時は、今あなたの下にある俺の名前を上に並べますよ」
「本当」
可愛くねーガキ。
タスクくんは笑った。
その耳にはオブシディアンが艶かしく輝いていた。