MADE IN BLUE -ソラ・ニ・ナリタイ-
「好かれるのは嬉しいんだけど、押し付けがましくてお節介な女って救いようがないから嫌いなんだ」
俺はそう言ってリナの腕をとった。
やっぱり俺は腕をとられるより、とる方が性にあってる。
「痛いってば…!!」
屋上に着くとリナは俺の手を振りほどいて赤くなった手首をさすった。
そして、いつも来ている一番慣れた場所の筈なのに居心地悪そうにしゃがみこむとコンクリートの地面を見つめる。
居心地が悪いのは俺も同じだ。
名前も知らないナントカさんがリナを殴ろうとさえしなければ、聞かなかったふりも出来たのに。
「セオリー的には、ここで俺がリナを問い詰めるとこなんだけど」
思わず溜め息が言葉に混じってしまう。
リナはそれに気付いたのか否か、小さく息を吐くと意を決したように俺を見上げた。
キャットアイを見開いていつもの笑顔を浮かべる。
「別に、ただ」
からかってみただけだよ。
笑顔だけで人を誤魔化せるのはリナ以外にそうそういないだろう。
そしてその笑顔で誤魔化されないのも俺以外にそうそういないんだろう。
いてたまるか。
「俺よりいい男ならまだしも、俺以下の男捕まえてなんか意味あんの?」
俺を通り越してリナが見つめている空を、俺も仰ぎ見る。
「そのナルシズムに満ち溢れた言い方、タスクみたい」
「お仕事関係でご一緒させていただいてますから」
俺たちは笑った。
足首に巻き付けられたクロスのチェーンがチャラっと音をたてる。
俺が苛ついているのはきっとそのチェーンのせいなのだ。