MADE IN BLUE -ソラ・ニ・ナリタイ-
あこがれ
「いてっ!!!!いてててててて!!!!いてぇってば!!」
さて問題です。
俺は今何回『て』を言ったでしょーか。
じゃなくて。
夏休みに入った俺は今、美容室に来ている。
雑誌とかにもよく載ってる有名店。
そして今俺の髪にコールタールみたいな脱色剤を塗りたくっているのがヘアメイクの逸樹さん。
撮影で何回かお世話になって仲良くさせてもらってる、俺のお兄ちゃん2号なのだ。
「我慢してろって。いい男にしてやっから」
逸樹さんは容赦なく作業を続行する。
脱色剤が触れたところがヒリヒリと滲みる。いや、もはやヒリヒリなんて限度は越えてジンジンとする。
「いてぇ!!」
「あはははは」
涙目の俺を笑う失礼な奴はタスクくんだ。
タスクくんもまた髪の色を変えるらしく、俺と同様にコールタールを塗りたくられてる。
「次は何色ですか」
「んー?黒かな」
タスクくんの黒髪…想像が出来ないぞ。
「はい。じゃあ20分放置するから。なんか飲む?コーヒー?」
「じゃあコーヒーで」
「逸樹さん俺にもちょーだい」
「はいはい」
逸樹さんは笑いながら奥へと行ってしまう。
タスクくんにコールタールを塗りたくってた美容師さんもいつの間にかいなくなっていて、その場には俺たち二人が取り残されていた。