MADE IN BLUE -ソラ・ニ・ナリタイ-
スタジオからの帰り道。
交差点の信号は相変わらず俺を足止めし、俺はまんまと焦れる。
赤から青に変わる前の一瞬。
肩に小さな衝撃。
既視感、デジャビュ。
俺はその衝撃の正体を知っていた。
「水城さん」
「ちょっと付き合って」
笑顔。
女の涙は武器っていうけど、本当は違うよな。
本当の武器は笑顔。
それも、自在に強度を変えられる毒みたいな。
一番厄介なヤツ。
「またパパラッチされますよ」
引きずり込まれる形で俺は、こないだとは違うカフェでコーヒーを飲んでいる。
水城も今日はアルコールじゃなくてチャイを飲んでる。ジンジャーの香りがこっちまで漂ってきて、食欲を刺激される。
あぁ、カレー食いたい。
「パパラッチか。気付いてたんでしょ?最初から私にくっついてきてるヤブ蚊」
「気付いてたっていうか。予想してましたよ。だって水城さんだし」
売れてるモデルさんの熱愛なんて、知りたい奴は沢山いるだろ。
「してやられたなぁ」
水城さんは苦笑する。
「狡猾だね、君は」
相変わらず、鋭いですね。