↑恋人以上≧恋愛未満↓



劇場の方からは
海の声が聞こえる。


劇団「北斗」はミュージカルを中心に活動してる。



海は歌が上手くて
ダンスが得意なんだ。


客席に座るとわたしは海の姿を見つめた。
見慣れた風景なのに
なぜかいつもと違って見える。



海の声が

動きのひとつひとつがわたしの胸をときめかせた。





そんなわたしに気づいた海が動きをとめる。



「葵?」


そういうと稽古を中断させた海が
ひとりぽっちの客席に近づいて来る。


「..また避けられると思った。」
少し照れ臭そうに目を反らしてはにかむと


「すぐ片付けたら行くから。俺の部屋で待ってて。」



そういう海の額から顎から流れる汗が
キラキラと光ってとても美しかった。



< 43 / 283 >

この作品をシェア

pagetop