短編集
笹おじさん
いつもどおりの毎日。
私は時間通りの電車に乗り、見慣れた乗客の顔を見る。
ふと、電車の向かいの席を見ると笹を沢山持っているおじさんが座っていた。
笹を一本取り出して、切っている。
変なじいさんだ。
「〜♪あげるよ」
暫くして、突然そのおじいさんが鈴虫のような口笛を吹いて、向かいの席に座っていた男の子に笹を差し出した。
よくみると笹は、葉に止まった鈴虫のように造られている。
呆気に取られて、そのおじいさんを見ると次に造ったのはトンボ。
形がトンボに見えるというレベルではない。
笹にトンボが止まっている姿をありありと再現しているのだ。
びっくりした。
ただの得体の知れないおじさんが私の中で、得体の知れないすごいおじさんになった。
私はただの笹が、芸術品になっていくのが不思議でどうしても目が離せなかった。
ふと我に返って、周りを見渡すとその様子を見ていたのは、
笹を貰った親子と、向かいのおじいさんの隣りの隣りに座っていたサラリーマン、そしておじいさんの隣のおじさんだけ。
他の人は沢山いるけど、少し見ただけで視線を携帯に戻す人ばかり。
笹おじさんは、暫くして降りて行った。
またいつもどおり同じ景色なのに、
なんだか足りない気がした。
私は時間通りの電車に乗り、見慣れた乗客の顔を見る。
ふと、電車の向かいの席を見ると笹を沢山持っているおじさんが座っていた。
笹を一本取り出して、切っている。
変なじいさんだ。
「〜♪あげるよ」
暫くして、突然そのおじいさんが鈴虫のような口笛を吹いて、向かいの席に座っていた男の子に笹を差し出した。
よくみると笹は、葉に止まった鈴虫のように造られている。
呆気に取られて、そのおじいさんを見ると次に造ったのはトンボ。
形がトンボに見えるというレベルではない。
笹にトンボが止まっている姿をありありと再現しているのだ。
びっくりした。
ただの得体の知れないおじさんが私の中で、得体の知れないすごいおじさんになった。
私はただの笹が、芸術品になっていくのが不思議でどうしても目が離せなかった。
ふと我に返って、周りを見渡すとその様子を見ていたのは、
笹を貰った親子と、向かいのおじいさんの隣りの隣りに座っていたサラリーマン、そしておじいさんの隣のおじさんだけ。
他の人は沢山いるけど、少し見ただけで視線を携帯に戻す人ばかり。
笹おじさんは、暫くして降りて行った。
またいつもどおり同じ景色なのに、
なんだか足りない気がした。