あいつのお気に入り

「…それは災難だね」

同情する夏揆。
慰めるように頭をヨシヨシと撫でてくれる。


あり得ないよね。
あたしのファーストキス…。


彼氏いないなりにファーストキスは夢見てた。

綺麗な海岸で…とか、遊園地の観覧車の中とか…。


雑誌とかでは、初キスの味はレモンの味でも何でも無いって書いてあったけど。


あたしはそれでも甘酸っぱい気持ちになれたりするんだと思ったりしてた。


あんなのいきなりすぎて何されてるのか初め理解するのに時間がかかった。


…最悪だよ。


落ち込んでるあたしに夏揆が言葉をかける。

「誰にされたんだっけ?」


へ?

誰に…。
あいつ、あたしの名前は聞いてきたけど自分の名前は言わなかったな。

まぁ、それもそうか…。お互いの名前言い合ったらただの自己紹介になるか。


いきなりキスしてきた奴が律儀に自分の名前を名乗るわけ無いよな。


自問自答を繰り返すあたし。
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