あいつのお気に入り
一人テンションが高いあたしを見て、
「ははっ。じゃあ、今日は遠慮無く沙羅(サラ)にゴチになっちゃおっかな」
と笑ってくれた。
「夏揆の行きたいところどこでも行っちゃうよ!?」
あたしもつられて笑顔になる。
…金欠だけどね。
まあ、何とかなるでしょ!
隠れて寂しい財布の中を見て苦笑するあたし。
…まあ、何とか…。
「ねぇ、百瀬(モモセ)さん?」
隠れて財布の中を確認していたあたしは思わず肩をビクッと上げてしまった。
百瀬とはあたしの名字。
振り返ると同じ委員会の北山(キタヤマ)さん。
「…はい?」
委員会の仕事の割り振りくらいしかあまり話す事が無く馴染みが薄い北山さんに声を掛けられて、頭にクエスチョンマークが浮かぶあたし。
何かありましたっけ?
話の内容を探っていると、
「今日、私用事が出来ちゃって。曜日で担当してたゴミ出し、やってくれないかな?」
手を合わせてお願いする彼女。
…ああ。
そんな事か。
内心、何だろうと疑問でいっぱいだったあたしはホッとした。
「いーよ。そのくらい、あたしやっとくね?」
手で丸のマークを作り、OKの意味をした。
「あ、ごめんね?
ありがとう!じゃあ、今日の担当よろしくね」
そう言って満面の笑みを浮かべてる。
なんか、ちょっと人助けしたみたいでいいなぁ。
北山さんの笑顔を見てそんな事を思うあたし。